プロポーズ

「憂ちゃん、俺と同じ名字になってくれよ」

ある夜、突然言われた

私も結婚することになるだろうと思ってはいたが

そんな言葉が聞けるとは思っていなかったので素直に喜んだ

色々あったけど

あったけど・・・

本当にいいの!?

そんな感情も心の奥底に実はあった

結婚すると約束はしたものの

「結婚式、したいの。だからお金を貯めよう♪」

そう、、、

結婚に至るまでに二人で何かを作りたかった

出会ってからの時間が短かったせいもあり

一緒に何かを達成することができればお互いの絆も強くなると思った

10月に入って、私は自分が妊娠してることに気付いた

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言い訳

何時くらいだったか、亮が帰宅した

昨夜、何があったのか私は勇気を出して静かに聞いた

仕事が終わったあと、お店のオーナーに飲みに誘われた亮

オーナーの友人たちと一緒に飲んでいたらしい

その中にはオーナーの愛人も含まれていた

オーナーの奥様は私よりも年下で、幼稚園の娘さんと

生まれて間もない乳児の女の子がいた

一度、引越しのお手伝いにお邪魔したことがあるが

一人で二人の娘たちをお風呂に入れていた姿を私は今でも忘れていない

大変そうだなって思いながら見ていたから・・・

まだ、子供を産んだことも育てたこともない私は

どうしていいのかわからずにウロウロしていた

夜にお仕事をする旦那さまと生活するというのは大変なんだろうなって・・・

話が脱線してしまったので戻しますね

その、飲み会の最中

オーナーが突然言ったらしいんです

亮の車で自宅に送ってよって!

お酒を飲んでる席で、それ本気ですか?って思うよね

それで、アパートまで車を取りに来てオーナーのいる店へ

車を運転して戻り

愛人と過ごすホテルへ送り

待っててほしいからと私じゃない他の女の人とホテルの一室で過ごさせ

朝になってから妻の待つ自宅へ送らせたと言うのだ

私は本当なのか、嘘なのかを問いただす気持ちにすらならず

その女性と何かがあったのかすら聞く気持ちにもなれずにいた

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朝帰り

亮と出会った5月

仕事を辞めた6月

二人で部屋を借りた7月

そして、8月になり亮がようやく仕事を決めた

炭火串焼き屋

早く仕事を決めてほしいと強く言えなかった私は

『どんな仕事がしたいの?』

そう聞いてみた

高校を中退し、この街で調理師専門学校へ通い

そこも中退したものの

ちょっと有名な居酒屋で二年ほど働いていた亮は

調理関係の仕事がしたいと言った

やりたいと思ってる仕事なら頑張れるだろうと

私は応援した

二人で車に乗ってるときに見つけた張り紙

バイト募集の張り紙

亮はそこへ面接に行った

お店を経営していた30代前半くらいの男性は

一目で亮を気に入ってくれてすぐにでも来てほしい

そう言ってくれ、亮もヤル気満々で仕事を始めた

私は安心した

早く私も仕事を決めなきゃ!

失業保険の期限が切れるまでには!

亮の送り迎えをしながら

時々、そのお店に顔を出してみた

楽しそうに働く亮の姿が嬉しかった

雷が激しい夜には心配して電話をくれた

私はちっとも怖くなかったのだけど

女のコは怖がるものだからと亮は笑った

ある夜、お店に電話しても誰も出ない

いつもなら、12時を少し過ぎた時間には帰宅するのに

今日は連絡もないまま帰ってこない

車はウチにあるし、迎えに行くにも行けず

時間だけが過ぎていった

諦めて布団に入り待つことに決めた

ウトウトしていると、ようやく帰ってきた

私は眠ったふりをして亮が布団に入るのを待っていた

私の頬にキス

思わずニヤけそうになるのを必死でこらえていると

亮はこっそりと出て行った

しかも、車に乗って・・・

私は状況を把握できず布団から起き出し待った

明るくなっても、6時を過ぎても帰ってこない

いつも、亮がしてくれるゴミ出しを私がした

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借金発覚

部屋さがしを始めた

実家から車で2時間ほど先の街で新しい生活

だけど、まずは住むところを確保してから

仕事をさがそうと思っていたが甘かった

親が保証人になってくれても二十歳を過ぎた大人に

無職で部屋をかしてくれる大家さんはなかなかいなかった

事情を不動産の人間に説明し

どうにか部屋をかしてくれる大家さんを見つけた

6畳2間、キッチン、バス、トイレ付き

線路のすぐそばで4万円

ココに決めた!

敷金もなにもかも準備金は私が出した

幸運なことに直前に行ったパチンコの開店で

10万ほど勝ったのが助かった

あとは、銀行カードローンから私が出す

亮は車はあるけどローンもなかったので安心していた

すぐに返せる!

引越しを終え、新生活スタート♪

職業安定所に通いながらパチンコしたり

海辺でゴハンを食べたり、ちょっとお気楽生活

でも、借金のある生活は私をどんどん不安にさせた

借りられる枠にも限度がある

パチンコに行くたびにイライラするようになった

わざと

『私、今日は行かない』

と、暗い顔で言っても亮は一人で行ってしまう

どうにかハローワークで面接先を見つけ

次は講習を受けることになった

午前中は真面目に講習を受け、昼食をはさみ

午後からまた講習というとき

亮は突然、行かないと言い出した

私は怒るよりも悲しくなり泣いた

車の中で泣いた、何も言わずに・・・

そんな私にイライラした亮は私を車からおろし

一人で走り出してしまった

歩いて帰るしかなかった・・・

トボトボと歩いていると後ろから亮の車が・・・

私を追い越して走り去った

なれない街を一人で歩く

何時間かかっただろう

1時間か2時間か・・・

帰宅すると封筒に入れていた現金がない

どうしようもない男だと思いつつも私はまだ好きだった

実家に帰るお金もなく、帰りを黙って待ち続けた

帰宅した亮はパチンコに行ってきたらしい

私の全財産を持って・・・

亮はこの街に住んでいたことがある

その時にお世話になった知人に会いに行くと

夕方、フラリと一人で出かけた

信じて、疑うことなどしなかった

まさか、借金返済のやりくりのために出かけてたなんて

・・・・・・

いつの夜だっただろうか

ビールを飲みながらお互いの昔話をしていたとき

過去に作った借金の理由について聞いてみた

『俺さ、東京に住んでた時期があったじゃん。あの時、騙されたんだ!友達の借金の保証人になって、その友達が突然消えちゃって、俺が払わなくちゃいけなくなって・・・、そういうのって一回でも、一円でも払ってしまったら、俺の借金ってことになってしまうんだって。』

そう言いながら涙を流していた

世間知らずな子供だった私は素直にそれを信じた

その借金は結局は亮の親が払った

それは亮の親からも聞いたことがあった

事情は知らなかったのか、知っていて黙ってたのか

わからないけど、同じ過ちは繰り返さないだろうと思ってた

それなのに・・・

サラ金3社から借金をしていたなんて・・・

150万

それなのに

働こうという気持ちに焦りがないなんて・・・

それなのに

サヨナラも言えない私

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義母との確執

亮の両親は連れ子同士の再婚だ

まだ、亮が3歳だった頃に亮の父親が再婚し

亮は中学に入るまで知らなかったらしい

2コ年上の義母の連れ子の姉が

いとことやり取りしていた手紙を偶然読んでしまい

亮は事実を知り、過去を頭の中でめぐらせ義母を恨んだ

どこの親子でも理不尽な出来事があったりする

亮はすべて血の繋がりがないからだって恨んでしまった

親戚たちから伝えられる実の母の情報

乳飲み子の亮のめんどうを見ることもせず捨てた

・・・。

亮じゃなくても信じたくない話だ

私はお酒が好きで、亮のお母さんもお酒が好きで

私は亮の家で暮らしてる間、数回ほど

お母さんと遅くまで飲んで語り合った

涙を流し、憂ちゃんが来てくれて亮が変わったとか

これからは、皆で仲良くやっていけるとか

亮は色々と言うけど、ちゃんと愛情持って大切に

育てていたらしいことは私にはわかった

だって、お母さんはお父さんのことが本当に大好きだった

そのお父さんにそっくりな息子を粗末になんてしない

お父さんが一番に大切にしている宝物の息子を粗末にしない

バカじゃない女性だから

そんな意地悪して失ってしまう愚かなことはしない人だ

亮には、どこか夢見がちなところがあって

自分の様々な境遇をドラマのように仕立て

主人公にしてしまうクセのようなものがあった

そうしないと

自分の存在を確認できない寂しい人だったのかもしれない

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【アイツ】で充分な専務サン

社長の親戚・・・専務=アイツ('A`)

幼い頃に父親を亡くしたため社長が父親代わりだったらしい

学生時代は人気もあり生徒会長も勤め大学も卒業した

政治家になるのが夢らしく、よくNHKやニュースを見ていた

頭は悪くない

人付き合いも悪くないし、いつも笑顔だ!

外面だけは・・・

ガソリンスタンドにお客さんが来る

『いらっしゃいませ~』と、外へ走る前に

必ず、その人間をけなしてから笑顔で走り出す

(田舎町なのでお客さんは顔見知りがほとんど)

笑顔で迎えられた人間はそんなこと裏で言われてるなんて

夢にも思わず、自分は専務にとっての特別な存在だとまで

勘違いしてしまうほど、専務は巧妙だった

どの顔が本物なのか、私もよくわからない

自分のことになると、ちょっと気の弱い一面もあり

テレ屋な一面もあり、そのせいか結婚は見合いだった

私のことを

とことん嫌いなのか、ちょっと気になる存在なのか・・・

専務が出席する宴会に、帰り道の途中だからと

お願いされて数回、車で送り届けたことがある

ある日、一万円を渡され

『足代だからとっとけ!』

の、一言に反応する間もないうちに車からダッシュ!

返すべきか悩んだあげく、パチンコに投資したけど(笑)

ある時は、私に襲われる夢を見たと職場の仲間に大騒ぎ

私の耳には入れるなと言ったらしいけど、バッチリ聞こえた

優しい時もあり、すっごい意地悪な時もあり

好きにも嫌いにもなれなかった

けど、嫌いなほうのパーセンテージが大きいかな~

今も嫌いと思い続けるほどのものでもないけど。。。

あれから・・・

夢は実現され、市会議員として活躍しているみたいだ

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逃げてた現実の整理

勇気をふりしぼり亮の家へ帰宅した

現実からとても逃げたかったけど

楽しいことすべてまで失うのは、やはりイヤだった

お父さんの説教を亮は正座して聞いていた

私たちがいない間の一週間

専務は私と亮の両親に呆れるほど私の悪口を

ふきこんでいたらしい

優しかった亮のお母さんが私を見る目つきは軽蔑だった

上司へ何も言わずに職場を出て一週間の音信普通は

専務を監督署へ走らせていた

期限内に連絡がなければ

職業安定所を仲介して職業を得ることが

できなくなってしまうというものだ

若い二人には、あまりにもヒドイ仕打ちじゃないか!

私の母は怒りを抑え切れなかったらしい

私のためにどれほどの悔しい思いをしたのだろう

亮の家へ荷物を取りに行った時

亮のお母さんのキツイ視線にも我慢して耐えたという

私の母は口が悪い

それが原因でよくケンカになる

だけど、ちゃんと話をしてみれば

やはり、自分を産んでくれた母親なんだなって感じる

亮の家へ帰宅した翌日

二人で決心して、私の実家を訪ねた

亮は殴られるだろうと覚悟をしていたらしい

意外に穏やかに受け入れられたことに驚いた

『本気なら本気だって、ちゃんと言いなさいよ。』

私の母が言った

お母さん、あなたの娘はいつだって本気の恋をしてます

その言葉は心の中でつぶやいただけだった

『違う街で二人で暮らしたいんです。』

一週間、滞在した街で暮らしたいと

思い始めていた私たちは、それを伝えた

ちょっと単純で楽天的な思考の持ち主の私の父は

『だから、一週間もそこにいたのか♪』

ニコニコしながらそう言った

深く、重く、考えていた私たちは拍子抜けしてしまった

ワクワクする次のステップを簡単に登り始めてしまったのだ

まずは、今までの問題を先に整理しなければいけない

職場へ行き、一人ずつ専務と話をした

退職の意思表示をし、支払うべき金銭を処理した

ガソリンスタンドで働いていたので

ガソリンは一ヶ月分のまとめ払いをしていた

亮はタイヤを購入していたため金額が大きかった

すべて、私の貯金から出費した

亮だけが、専務に戻って来いと言われた

もちろん、戻るわけなどない ( ,_ゝ`)

監督署への申請は取り消された

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心中気分

飽きていた・・・

スロットで遊び、景気のいい食事をしてホテルで眠ることに

幸か不幸か連勝していたのも帰らなかった原因のひとつ

長く留守にすると帰りにくくもなる

しかも、飛び出した状況が状況だ

イヤなことから現実逃避していたものの

いつまでも不確かな状況に満足してられないのが人間

『そろそろ帰らないとヤバイよ』

『うん・・、気まずいけどな・・・』

『きっと、亮の親も怒ってるよね。専務は私のことが大嫌いだし、亮のお母さんは専務と親しくしてるし、話を聞いて怒ってるよね。』

『今日さ!スロットで負けたら帰ることにしようよ!』

良くない状況をすぐに解決しようとしないまま

逃げ道のように違うことをしようとすることは私は好きじゃない

だけど、勇気のいる行動にはやはり足がすくむ

亮も同じ気持ちだったらしい

胸の奥につっかえを持ったままの私たちの気持ちを

まるでわかっているかのように

今日はお金がどんどん吸収されていった

今夜、泊まるお金も食事するお金もなくなってしまった

帰るしかない!

亮が勇気を出して自宅に電話をかけた

『今日、帰るから。』

どこにいるのかと訪ねる母親に車で30分ほど先の

町にいると亮はウソをついた

どうしてそんなウソが口から出たのか私にはわからない

『憂ちゃんのお母さんが憂ちゃんの荷物を取りに家に来たの。あなたたち、どうして仕事を辞めたの!』

その言葉に私たち二人は凍りついた

亮のお母さんは怒っていた

そして、とても良くない状況になっていることを痛感した

帰ると決めたものの帰りたくない

途中、気晴らしをしようと湖へ寄り道することにした

新緑の季節

清々しい空気を吸えば気分もスッキリすると思った

ノンビリと手をつないで歩き

木々の間をかくれんぼしながら走った

大声で笑っていても、心の中が苦しかった

笑うほどに、よく晴れた青空を見るほどに

青々した葉っぱに生命力をわけてもらうどころか

どんどん私たちの気持ちは沈んでいった

諦め、車に乗り・・・

走った状態の車の中で私たちは手をつないだまま

バンザイをして大声でまた笑った

笑って、笑って、無理して笑うことすらできなくなった時

亮がポツリと言った

『このまま死んじゃおうか・・・』

実は、私も同じことを考えていた

このまま死んじゃってもいいかなって・・・

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かけおち気分

社長の娘に一言たたきつけての退職

と、言っても正式にではなく気分だけというか・・・

亮と車でアテもなく流れ

ついた先はよく買い物や遊びに訪れる街

フラリとパチンコ屋に入り

イヤなことも忘れスロットを打ちまくる

出る!出る!出る!!

なんだかスッカリ気分は上昇↑↑

リッチになった懐に焼肉が食べたいとお腹が訴える

カルビ・ロース・牛タン・ユッケ・カルビスープ

サラダ大盛り!ビール飲み放題!

楽しくて帰りたくなんかなくなっちゃった

今夜はこの街に泊まろう☆

満室だらけのホテル街をめぐりまわり空室を見つける

あまり人気のなさそうな少しボロッちぃホテルだった

大声でしゃべり、笑い、歌い

冷蔵庫のビールがなくなって追加を注文

さすがに疲れた深夜

シャワーを浴びようとするとチョロチョロとしか

流れ出ない勢いにかけたシャワーは

ホテルの雰囲気によく似合っていた

さびれた感じに『かけおち気分』が沸々と湧き上がる

私と亮はそのドラマティックな気持ちに翻弄された

新鮮だったから・・・

そんな日々を過ごしながら

気が付くと、一週間が過ぎようとしていた

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逃走

楽しい日々が一ヶ月ほど続き

私は不安を感じ始めた

いつまで、こうしていられるのだろう

私の両親はどうして何も言って来ないのだろう

色々なことをモヤモヤと考えていたら

隣でぐっすり眠る亮にイラだった

そして、唐突に亮の家を飛び出したのだ

走って!走って!!

知らない町で、真っ暗な夜にドコへ行っていいのか

わからなくて怖くて・・・

おとなしく戻ろうかなと迷いが生じ始めたころ

亮が追ってきてることに気付いた

腕をつかまれた私は意地もあり、振り払い走った

亮の声が静かな田舎町の暗闇で響いた

「なんで、わかってくれないんだよ!」

「なんで!こんなに好きなのに!」

その言葉にどんな反応をしていいのかますます

わからなくなり、私は走った

ものすごい勢いで後ろから走ってきた亮が

私の腕を強い力で掴んで

そして、

「今の俺、ベン・ジョンソンより速かったと思うよ」

と、言って笑った

私も笑った

そのまま手をつないで家へ帰った

亮の両親が心配そうに起きて待っていた

亮は何も言わずに私をひきずるようにして階段をあがった

その様子を亮が乱暴してると誤解した両親は

亮に落ち着くように何回も大声で叫んでいた

そんな雰囲気に一度は落ち着きを取り戻した亮も

興奮してしまったのかもしれない

部屋の中で、どれほどに私のことを好きなのか叫び

勢いあまって壁を殴り、穴を開け手にケガをしてしまった

翌朝、二人とも疲れきっていた

社長の娘にばれてもいいじゃんかってやけくそ気味で

二人で車を職場前まで乗りつけた

しっかり見られました!

しかも社長の娘に!

何も言わずに仕事をしていると社長の娘が話しかけてきた

「亮くんと付き合ってるの?」

「うん、そうだよ」

「バッカじゃない!」

その一言に私はキレた

「あのさ!仕事のことで文句を言われるなら逆らわないけど

プライベートにまで口出ししないでくれるかな~?」

「あーっ、もうやってらんない!帰る!辞める!」

バッグを持って靴を履き替えていると

さすがに亮も驚いて追いかけてきた

「憂ちゃんが辞めるなら俺も辞めるよ」

そう言って、二人で亮の車に乗り込んだ

バカばっかりやって、仕事も長続きしなくて

両親に迷惑ばかりかけていた亮は

この職場で少し真面目に働くことができ

辞めたくはなさそうだった

そんな事情もあり、亮の両親に顔を合わせづらかった

病院へ行き、亮の昨夜のケガを手当てしてもらうと

私たちは、車で二時間ほど離れた街へ逃走した

いや、この時は逃走する気なんてなかった

ほんの少しだけ気晴らしのつもりで

住んでる場所より都会っぽい街に出たかっただけ

夜には帰宅するつもりだった・・・

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半同棲

亮の両親の笑顔に安心して私はうかれていた

自分の両親のことなどすっかり忘れていた

亮と一緒に食事をし、お風呂に入り眠る

缶ビールは毎晩大量に空になった

朝は職場の数100m手前で私は車を降り歩いた

職場の人にばれないようにするためだった

何よりも社長の娘の亮へのアプローチが続いていたから

ばれるのが怖かった

休日は亮の好きなスロットをしにパチンコ屋へ通った

笑いが止まらないくらい勝ち続け

焼肉やお寿司を食べ、ビールを飲みまくり

欲しいゲームやCDを買いまくった

毎朝、車の中で二人の好きなシャランQの

【ズルイ女】を歌いながら出勤した

亮の両親とはあいかわらず円満だったけど

ある日、私が一人でシャワーを浴びていると

急にお湯から冷たい水に変わってしまった

いくらなんでも、お風呂場から叫べない

そそくさと服を着て湯沸かし器を確認しにいった

それは台所にある

亮の母親が一人で食器洗いをしていた

それを知っていた私は、もしかしたら

わざとかもしれないと怖くなってしまったのだ

そーっと台所へ行き湯沸かし器を確認すると

火が消えていた

「憂ちゃん、叫んでくれればよかったのに・・・」

「うちの湯沸かし器は古いから時々消えちゃうのよ」

その言葉に安心し

私は笑顔で

「次からはそうする!」

そういってお風呂場へ戻った

夜は亮がギターの弾き語りをしてくれた

藤井ふみやの【True Love】

私の世界は亮一色だった・・・。

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家出

亮は肉が大好きだった

2月9日生まれだからニクの日生まれだ~

なんて、よく言って大声で笑った

亮はカラオケが上手かった

女の子の好きそうな歌ばかり選曲する

低音でよく響く声によく似合った

亮の女を口説き落とすときの戦略かもと思いつつも

まんまとそれにはまってしまった

あんなに大嫌いなタイプの男だと思ってたのに

一緒にやることすべてが楽しくて、笑いが止まらなくて

徹夜で遊んでも

翌日、仕事に行けばそこでまた会えるから・・・

だから、お互い仕事はどんなにきつくても休まなかった

朝帰りでバイバイして、それから一時間半後には

職場の人たちにばれないように意識しながら

『おはようございます~』って

そんな挨拶すら楽しくて仕方がなかった

両親に彼と別れたことを伝えなければと思った

これから亮と付き合っていくためにも・・・

実家へ行くと父は居間にいて母は出かける準備をしていた

父に説明してるのをチラチラと母が聞いていたのだろう

突然、顔を出すと

「淫売!売女!」

そう、大声で私を罵り出かけてしまった

実の母親に浴びせられたその言葉の重みに

私は耐えられなかった

父に家を出ると告げた

すぐに彼に電話し相談すると

「俺の家に来い」と言ってくれた

荷物をまとめ外に出た

彼の車が目の前をすごいスピードで通り過ぎて行く

と、急ブレーキをかけ

ものすごい勢いでバックしてきた

ドアを開け、真剣な顔で車を飛び降りたかと思うと

私を抱きしめて

「急がないとドコかへ行っていなくなってしまう気がした」

そう、つぶやいた

行くとこないのにそんなわけないじゃん

と、心の中で思ったことは声には出さないでおいた

彼はちょっとドラマチックな気分にひたってるらしいから(笑)

雨が降っていて・・・

彼は私を迎えに来る途中のカーブで

スピードを出しすぎ、少し怖い思いをしたらしい

車の中で、ずっと手をつなぎ彼の家へ向かった

彼の家では彼の両親が私が来るのを待っていた

ちゃんと両親に説明をしてから迎えにきてくれたらしい

私は照れもあり、大人っぽい挨拶などできなかったけど

彼の両親は私を笑顔で受け入れてくれた

自己紹介がすむと、リラックスしなさいよと

彼の母親に言われ、タバコを吸うのか問われ

吸うと答えると

「じゃ、ここにいる4人全員が吸うのね」

彼の母は笑顔で空気清浄機をつけ

4人でタバコを吸った

すんなりと受け入れられた私は安心し

彼の部屋で缶ビールで乾杯し眠りについた

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別れ話

亮とまた会う約束をしてしまい

おそらく、このまま亮に惹かれていくだろうと感じた私は

彼に別れ話をする決心をした

幸いにも今夜、うちへ来るという

早いほうがいい

彼が訪れて部屋へあがり座る

飲み物も出さず開口一番に告げた

「別れたい」

ほんの少しの沈黙のあと

「わかった」

お互い一言ずつ口にしただけですべてが終わった

彼は去っていった

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電話

翌朝、さっそく亮の攻撃をうけた

「なんで、電話してくれなかったんだよ!」

「俺、一晩中待ってたんだぜ!」

常に女の子にそんなことばかり言ってそうな彼に

ウソばっかり・・・

そんな気持ちでいっぱいになり適当にあしらった

「今日は絶対にするってぇ♪」

まさか、その一言が一日中

約束として洗脳するかのように言われ続けると思わずに・・・

家に帰宅してから、ずっと亮の声が聞こえるようだった

食事もお風呂もすませリラックスタイムに突入すると

その言葉は更に強く頭の中で響きまくった

約束しちゃったし、かけてみるだけ・・・

受話器を取り、番号を押す





Σ(゚∀゚*)



ワンコールもならないうちに!!!!!

「もしもし!!」

「あ・・、う・・・。」

ビックリしすぎて声にならない声でいると

「ちょっと電話の子機をいじってたんだよ」

「ビックリしたぁ!」

と、先手を打たれてしまった

そんな、突拍子もないハプニングのようなもので

急に親密さは増し、話は途切れず

そのまま、会うことになってしまった

迎えにきた彼の車の足元にはナゼか新聞紙が

敷かれていた

会ったのはいいけど、特に行き場所もなく

私の家に入りたいと言った彼を断りウロウロとドライブ

「どこかでゆっくり話しがしたいよなぁ!」

「俺の部屋ってわけにもいかないしホテルでもいいかな?」

何かあってもビシッ!と逃げ切れる自信もあったので

会話の楽しさからOKしてしまった

コンビニで缶ビールを大量に買い直行

二人で思う存分、飲みまくり、話は盛り上がった

・・・のは、いいんだけど

まさか(´ヘ`;)

彼のほうが先にダウンするなんて!

飲みすぎて具合が悪くなりトイレに閉じこもってしまった

具合の悪い人間を介抱するのは苦手なんだけど

この場合、ここには私しかいないし仕方がない

タオルを濡らしてトイレへ持っていった

やっぱり、リバースΣ(´Д`;)

それなのにタフというかなんというか!

トイレから出てくるなり私にくちびるを押し付け

ベッドへ押し倒そうとした

もちろん却下ヾ(`Д´*)ノ

自分だけベッドへ倒れこみ眠ってしまったのだ

家へ帰りたかった・・・

寝顔を見ても、どうでもよかった

外が明るくなるのを一人で待ち

4時ごろに彼を起こし、ようやく帰宅できた

一時間ほどの睡眠をとり出勤

ちゃんと彼も来ていたのにはビックリした

二人とも目は真っ赤だった

「昨夜はゴメン・・・、会いたくて休めなかった」

「また、会ってくれるかな」

少し照れくさそうに、でも真剣な顔つきで話す彼に

「いいよ」

笑みがもれてしまった

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出会い

ゴールデンウィーク明け早々・・・

アルバイト先に同じ年齢の男が訪れた

名前は亮 (あきら)

ヒザに穴の開いたジーンズを履いて

無愛想な自分を演出してるかのようなタイプだった

一目で嫌いなタイプのカテゴリーに分類した

顔は、なかなか良かった

若い頃の、保坂尚輝に似ている風貌

翌日から勤務を始め、私が仕事内容を教えることになった

一生懸命、説明をしても聞いてるのかどうかわからない

タバコを吸う場所や時間帯に遠慮がない

見るたびにイライラさせられた

同じ店舗で働く社長の娘は彼を気にいった様子

「亮く~ん、彼女いるの?」

「それは、ノーコメントということで!」

そんな会話によく遭遇した

なんだか、苦々しい過去がある男・・・

そんなイメージを与えようとしてるようにしか感じられない

その答え方に、私はどんどん嫌い度が増していった

けど、どんなに嫌いでも仕事は一緒だ

話しかけられれば無視もできない

ウソか本気かわからないような口調で話す会話に

次第にそれなりの楽しさを感じるようになった

家に帰れば忘れてしまうような他愛もない会話

そのお気楽さがめんどうじゃなくて好きだったのかもしれない

作業をしながらバカバカしい会話を繰り返す

「今日さ、俺の家に電話してよ!」

「はいはい♪」

「番号は44**だからさぁ~」

「はぁ?それ、アンタの車のナンバーじゃん」(笑)

「よく、見てよ!下二桁が違うじゃん!」

・・・、本当だ。

その夜、家に帰宅してから電話帳を開いた

あった・・・

名字も同じ、地区も番号も間違いない

電話はかけなかった

私には付き合ってる彼がいたから・・・。

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